2012年5月19日土曜日

江戸東京街歩き(3)

今日も美術展を2つハシゴしてきた。
別にハシゴが趣味というわけではないが、興味のある美術展が目白押しなので、毎週末忙しく動き回っていて、うれしい悲鳴を上げている。

今回は、午前がサントリー美術館の「毛利家の至宝」展、午後が千葉市美術館の「蕭白ショック!!曾我蕭白と京の画家たち」。
これは天空に向けてそびえ立つ東京ミッドタウン。サントリー美術館はこの3階にある。

江戸時代には長州藩毛利家の麻布下屋敷(檜屋敷)だったおもかげといえば、かつて下屋敷の庭園があったあたりに新たに整備された港区立檜町公園。今日は天気も良く、緑がまばゆいばかりだ。


高層ビルの谷間の緑の空間。大名屋敷があったからこそ残された(あるいは整備された)緑が多いのも東京の特徴だろう。
たとえば彦根藩井伊家の屋敷を例にとると、上屋敷は現在の国会議事堂周辺で、国会前にはその名のとおり国会前庭和式庭園が整備されている。中屋敷があったところは現在のホテルニューオータニで、敷地内には立派な庭園が整備されている。下屋敷跡は現在の明治神宮で、やはり木がうっそうと茂った森が残されている。
歩き疲れたときに、緑の中、ベンチに腰かけて一休み。東京の街歩きはそんなぜいたくなこともできる。
<Y>

2012年5月13日日曜日

江戸東京街歩き(2)

今日は美術展を2つハシゴしてきた。
一つは静嘉堂文庫の「東洋絵画の精華」、もう一つは畠山記念館の「唐物と室町時代の美術」。
東急の二子玉川駅に着いたのが12時前だったので、駅近くのコーヒーショップでパニーニとコーヒーで軽めの昼食を済まし、静嘉堂文庫までの遊歩道をゆっくり歩いて行った。太陽の光が輝き、さわやかな風が吹いて、もう初夏といっていいくらいの心地よい陽気。
静嘉堂文庫の一番の目当ては「平治物語絵巻 信西巻」。
4月29日には東京国立博物館で、「三条殿夜討巻」(ボストン美術館蔵)と「六波羅行幸巻」(東京国立博物館蔵)を見たので、これで絵巻の形で現存する「平治物語絵巻」三巻(ほかに色紙状に裁断された数葉と模本が二巻)をここ2週間の間にいっきに見たことになる。ただし、「信西巻」は巻き直しがあり、今日見たのは最後の第四段だったので、第一段から第三段まではあらためて見に来なくてはならないが、ボストンと違って静嘉堂であれば気軽に来ることができるので、展示する機会をのがさないでいつか見ることにしよう。

(展覧会の内容は静嘉堂文庫のホームページをご参照ください)
http://www.seikado.or.jp/

次は畠山記念館。
二子玉川までもどり大井町線に乗り、大岡山で目黒線に乗り換え、南北線の白金台で下車。
白金台からは歩いて10分ぐらい。住宅街の中にひっそりとたたずむ、緑にかこまれた畠山記念館。
ここでの目当ては、伝・夏珪筆の「山水図」と、伝・周文の「山水図」。
中国・南宋の画家、夏珪の作品は、雪舟が手本にしただけあって、「山水長巻」と雰囲気がよく似ている。「山水長巻」は来週見に行く予定。「没後500年 特別展 雪舟」依頼10年ぶりなので楽しみ。

(展覧会の内容は畠山記念館のホームページをご参照ください)
http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/

上にあげた作品のほかにも、多くの芸術作品にふれて、今日はいい一日だったな、と満足しながら白金台駅に向かう途中でふと思った。

「日本の古美術品にも三層構造は成立している」

江戸幕府の崩壊後、徳川家や大名が所有していた美術品は、金と力を失った大名たちから、皇室や現在の国立博物館、そして財閥や大企業の手に渡った。
静嘉堂文庫は三菱、畠山記念館は荏原製作所が設立したもので、いずれも経営者が蒐集した東洋の古美術品を収蔵している。ただし、ここでは必ずしも第一層 江戸幕府→第二層 明治政府→第三層 民間企業の順に整然と並んでいるのでなく、第二層と第三層は同時並行になっている。

それにしても、私たち一般の人にとってはありがたいこと。
大名が所有していたときは限られた人しか拝見できなかったが、今では時期の制約などはあるものの、入館料さえ払えば第一級の美術品を誰もが見ることができる。
それに、廃仏毀釈の難を逃れた仏教美術の受け皿になってくれていることもうれしい。

たとえ海外に流出したとしても、そこで日本の美術作品が守られているわけだし、海外の人にとっても日本文化を理解してもらういいきっかけになる。
私たちがブリジストン美術館でモネやセザンヌの作品を見て印象派の作品を味わうことができると同じだ。

帰りに、白金台駅近くの瑞聖寺にお参り。大雄宝殿は、江戸中期の再建で、重文。ここには山の手七福神の布袋さんも祭られていて、以前、七福神めぐりのときお目にかかっているが、今日は暗がりの中、シルエットだけがうっすらと見えたので静かに手を合わせた。

タワーマンションが立ち並ぶ白金台。そこから一歩離れると江戸時代の建物が出てくるというのはやはり東京歩きのおもしろさ。<Y>