2013年6月26日水曜日

天気晴朗ナレド波高シ~横須賀軍港めぐり~(2)

(前回からの続き)
軍港めぐりクルーズのあとは昼食。メニューはもちろん「海軍カレー」。
「海軍カレー」のお店は迷ってしまうほどあるが、口コミ情報や店の雰囲気を考え、記念艦三笠に行く途中ということもあるので、どぶ板通りをてくてく歩いて、

「どぶ板食堂Perry」に入ることにした。


店の雰囲気はアメリカのバーそのもの。
店の奥の方では米兵とおぼしき青年たちが海軍バーガーやフライドポテトを食べながら談笑していた。この日は土曜日だったのできっとオフなのだろう。
カウンターの上の方を見上げてみると福助の人形が置いてある。こんなところは日本を感じさせてくれる。

注文して10分ほどで海軍カレープレートが運ばれてきた。
カレーライスに鳥のから揚げ、フライドポテト、福神漬け、サラダ、それに海軍カレーに欠かせない牛乳。
鳥のから揚げとフライドポテトは、アメリカン風にテーブルに置いてあった巨大な入れ物のケッチャップとマスタードをたっぷりかけた。鳥のから揚げとマスタードは意外と合うのを発見した。
そして主役のカレーは、具がよくルーに溶けて味わい深く、適度な辛さ。カレーを食べながら牛乳を飲むと、辛さがやわらぎマイルドな味が口の中に広がる。
お店の人たちの対応もさわやかだし、カレーが出てくるのも早いし、味もいいしで、この店はお勧めです。

少し遅めの昼食を終え、ふたたびどぶ板通りを歩き、米海軍基地の前を過ぎて、三笠公園に。
記念艦三笠の前で東郷元帥がお迎え。


入口の階段を上って艦内に入ると、

8センチ副砲が遠くの海原に向かってにらみをきかす。



こちらは15センチ副砲。
副砲1門につき10人の兵士が配置され、その10人はここで寝食をともにする。
真剣なまなざしの若い水兵さんたち。


寝るのはハンモック。


艦内には当時の調度品もきれいに保存されている。
ここは司令長官浴室。
艦内に浴室があるのはあとは艦長用だけ。


こちらは執務室。家具は当時のまま。
 

艦尾近くの司令長官公室。ここで来賓のレセプション、戦時には作戦会議などが行われた。

三笠に来るのはおそらく40年ぶりぐらい。
日本海海戦の紹介ビデオも昔はフィルムだったが、今ではCG。
時代は変わったものだ。
けれども以前は見かけなかったこのジオラマのアナログ感は、何とも言えない味わいがある。
手前はロシア・バルチック艦隊が北上しているところ。
奥の聯合艦隊は、敵艦隊を前に一斉回頭している。のちに有名になった「東郷ターン」だ。
戦艦の主砲部分の豆電球が時おり光り、主砲を発射しているように見せている。
戦艦群のそばには敵の砲弾が飛んできて水柱が立つ凝りようだ。
これはいつまで見ていても飽きない。



それにしても艦内には若い女性のグループが多い。
ここでも若い女性の二人組が興味深そうに見入っていた。
若い男性もいたが、みんなカップルで来ていたので、圧倒的に女性の比率が高い。
歴史の好きな女性たちのことを指す「歴女(れきじょ)」という言葉があるが、彼女たちは、「歴女」の中でも特に近現代史や軍事に興味をもつ「軍女(ぐんじょ)」なのだろうか。

艦橋に上り艦首方向を臨む。


探照灯が可動式だというのは知らなかった。


艦首方向から30センチ主砲、マストを臨む。


マストには、日本海海戦の時と同じくZ旗がはためいている。


甲板には三笠が使った砲弾も展示されている。


主砲はしっかり対岸の米軍基地に照準を合わせている。


そして最後に艦首方向から全景を臨む。


久しぶりの三笠。
こんなに見ごたえあるものだとは思わなかった。
閉館間際までたっぷり2時間は艦内にいた。
この日のおみやげはZ旗(小)250円。


昼間は晴れていて気温も高く、それによく歩いたので、さすがにのどが渇いてきた。
三笠を出た後は、横須賀中央駅の方に向かい、途中の鮮魚居酒屋で打上げ。
ビールがおいしかった。
<Y>
(「天気晴朗ナレド波高シ~横須賀軍港めぐり~」終わり)

2013年6月24日月曜日

天気晴朗ナレド波高シ~横須賀軍港めぐり~(1)

このところ梅雨らしい日が続き、台風まで接近してきたので天気が心配だったが、先週の土曜日は朝から晴れ間が見えてきて絶好の軍港めぐり日和になった。
あと気がかりなのは日本の護衛艦や米軍の艦船がどれだけいるかだ。
こればっかりは軍事機密なので事前にはわからない。

ということで期待と不安を胸にまずはJR横須賀駅。


軍港めぐりの汐入ターミナルまではヴェルニー公園の中を歩いていくことになる。
公園に入ってすぐに目に入ったのは灰色の鋼鉄のかたまり。
よかった、護衛艦だ。



DD-156は第二世代汎用護衛艦「あさぎり」型の「せとぎり」。定係港は大湊なので訓練の途中で立ち寄ったところなのだろうか。
手前は第三世代汎用護衛艦「むらさめ」型の「ありあけ」。「ありあけ」も定係港は横須賀でなく佐世保だ。




汐入ターミナルでチケットを買い、桟橋に向かうと、すでに乗船を待つ人の長蛇の列。
親子連れや年配のご夫婦、若いカップル、いかにも軍艦マニアのおにいさん、とさまざま。軍港めぐりは幅広い世代に人気があるようだ。

これが私たちの乗船する「Sea Friend Ⅴ」号。


定時に出航してまず出迎えてくれたのは鋼鉄の黒い塊、海上自衛隊の潜水艦だ。

続いて米海軍イージス艦 アーレイ・バーク級のラッセン(Lassen DDG-82)。


「こんごう」とか「きりしま」とか山の名をもつ日本のイージス艦は、その名のとおり見上げるほど艦橋が大きく威風堂々としている感があるが、アメリカのイージス艦の艦橋はコンパクトにまとまっている。


さらに進むと、イージス艦ジョン・S・マケイン(John S.McCain DDG-56)。
ジョン・S・マケインは、昨年12月に続き、今年4月にも北朝鮮の弾道ミサイル発射の動きに対応して
朝鮮半島沖に派遣されていた。


任務を終えて横須賀に戻り、フェイズドアレイレーダーの調整を行っている珍しいシーン。

 


米第七艦隊のイージス艦群。左からモンセン(Momsen DDG-92)、ステゼム(Stethem DDG-63)、カーティス・ウィルバー(Curtis Wilbur DDG-54)、そしてジョン・S・マケイン。
これだけ多くのイージス艦が並ぶと壮観だ。
世界中に103隻しかないイージス艦のうち84隻も保有しているアメリカの海軍基地ならではの光景。


イージス艦の隣、赤と白の巨大なクレーンの横が原子力空母「ジョージ・ワシントン」の停泊地。
前日の朝に出航してしまったようだ。

海上自衛隊のエリアに近づいてい来ると、珍しく退役した潜水艦が係留されている。
本来であれば解体されるのだが、そのまま保存されているのは珍しいという。


赤と白の鉄塔のある建物は自衛艦隊司令部。
前に停泊しているのは、右から海洋観測艦「にちなん」(AGS5105)、「しょうなん」(AGS5106)。


こちらは掃海艇「はちじょう」(MSO303)。
海上自衛隊もFRP(繊維強化プラスチック)製掃海艇にシフトする中、貴重な存在となった木造の掃海艇。

軍港めぐりとは関係ないが、我が横浜ベイスターズの練習場。

4月1日に退役したばかりの第一世代汎用護衛艦「はつゆき」型の「さわゆき」。
「はつゆき」型の特長である船体中央の大きな煙突がよくわかる。
「はつゆき」型は昭和57年から62年までに12隻建造され、すでに旧式化しているため、4隻が除籍、3隻が練習艦に種別変更され、5隻だけが護衛艦籍に残り、地域配備部隊に配属されている。


「さわゆき」の隣が、新兵器などを搭載し試験を行う試験艦「あすか」(ASE6102)。


続いて補給艦「ときわ」(AOE423)。


そしてこちらはヴェルニー公園からも見えた第二世代汎用護衛艦「あさぎり」型の「せとぎり」。
「あさぎり」型は昭和63年から平成3年までに8隻が建造され、一時練習艦に種別変更された艦もあったが、現在ではすべて護衛艦籍にある。
後部の巨大なヘリ格納庫が大きな特長。


続いて現時点での最新鋭護衛艦「てるづき」。
「てるづき」は第五世代汎用護衛艦「あきづき」型の2番艦で、今年の3月に就航したばかり。
「さわゆき」や「せとぎり」に比べて洗練されたスマートな船型になっている。
「あきづき」型はあと2隻、「すずつき」と「ふゆづき」が建造中で、来年3月に竣工予定。


こうやってヘリ格納庫の中まで見えると、プラモデルをつくるときに役に立つからうれしい。

「てるづき」の後ろは、やはりヴェルニー公園から見えた「ありあけ」。
「ありあけ」は、平成8年から14年までに9隻建造された第三世代汎用護衛艦「むらさめ」型の最終艦。
船体があか抜けてきたのは第三世代からだろうか。



日本のイージス艦「きりしま」やヘリ搭載護衛艦「ひゅうが」も、さらに「ジョージ・ワシントン」も不在だったが、五世代のうち四世代の汎用護衛艦のスタイルの違いを期せずして比較することができたのは大きな収穫。
平成15年から18年にかけて5隻建造された第四世代汎用護衛艦「たかなみ」型は見ることができなかったが、「たかなみ」と「おおなみ」は「てるづき」と同じ第6護衛隊に属し、横須賀を定係港としているので、いつかはお目にかかることができるだろう。
45分のクルーズを終えたばかりであったが、また近いうちに来たくなった。
<Y>
(次回に続く)

2013年6月4日火曜日

「夏目漱石の美術世界展」ブロガー特別内覧会

先週の金曜日、東京藝術大学大学美術館で開催中の「夏目漱石展の美術世界展」のブロガー特別内覧会に参加してきました。
内覧会は18時30分に始まり、最初に大学美術館 古田亮准教授のユーモアをまじえたミニトークで見どころや主な出展作品についての解説をいただきました。


(主な内容)
・ 今回の展覧会では漱石の頭の中にある絵画的イメージが、どのように小説に映し出されているか見ていただきたい。
・ 『こころ』に出てくる渡辺崋山の「黄粱一炊図」は東京のみの展示
・ この展覧会のために制作された作品が2点あるのでこれも見どころ。
 「虞美人草屏風」(『虞美人草』に酒井抱一作として出てくるがおそらく架空の作品)
 「森の女」(『三四郎』の登場人物・原口画伯の作品)
・ まず見ることから初めてください。そして作品を読んでいただきたい。
・ 漱石自筆の作品もあります。辛口の批評をする漱石ですが、自分の作品となると
首をかしげたくなります。ここまで絵を見てくると疲れるので、息抜きにどうぞ。(笑)

などなど、とても楽しいトークで、今回の美術展に対する期待が高まります。

古田准教授のミニトークのあとは20時30分まで自由鑑賞。

まずはお目当ての日本画。
渡辺崋山の「黄粱一炊図」は、蛮社の獄でとらえられた崋山がこの絵を描くために死期を一週間繰り延べたという作品。
涙なしには見られない作品です。

他にも俵屋宗達、円山応挙、伊藤若冲、池大雅、与謝蕪村、岸駒、と江戸時代を代表する絵師たちの作品がずらりと並び、解説を読んでいくと、漱石がそれぞれの絵をどう感じていたかがよくわかり、絵に対する興味もますます深まっていきます。



実は西洋画にはあまり関心がなかったのですが、漱石ゆかりのイギリスの画家の作品がいくつか出展されていて、ターナーの絵全体にかかる光と靄(「金枝」)、リヴィエアーの夕日に染まる空(「ガダラの豚の奇跡」 日本初公開だそうです)、ミレイの暗闇(「ロンドン塔幽閉の王子」)などなど、ラファエル前派などの西洋美術に関心のある方にとっても見逃せない作品が並んでいました。

 

それに漱石と同時代の横山大観、寺崎広業の「瀟湘八景」も見ごたえ十分でした。
特に寺崎広業という方は、私が知らなかっただけかもしれませんが、初めて作品を見た方でした(この作品に対する「子供の様な大人のする丹念さ」といった漱石のコメントも面白かったです)。
こういった新たな出会いがあるのも美術展の楽しみのひとつです。

展覧会の図録もとても充実した内容です。
鑑賞後にじっくりと漱石の作品と今回の出展作品との関係について学ぶことができ、美術評論としても読むことができます。



この展覧会は7月7日までで、その後は静岡県立美術館で7月13日(土)から8月25日(日)まで巡回展が開催されます。
「文豪」夏目漱石を美術という観点からとらえ直す、これまでに(これからも?)ない貴重な企画です。
漱石ファンはもちろん、そうでない方も十分楽しめる内容ですので、この機会にぜひご覧になることをおすすめします。〈N〉

(今回撮影した写真は美術館より特別な許可を得て撮影しています)