2014年5月25日日曜日

『こども展 名画にみるこどもと画家の絆』内覧会レポート

子供たちの絵を集めた展覧会「こども展」が東京六本木の森アーツセンターギャラリーで開かれています。




本展は2009年から10年にかけてパリのオランジュリー美術館で好評を博した展覧会を、日本向けに再構成したものだそうです。

オルセー美術館、オランジュリー美術館、ルーヴル美術館、マルモッタン・モネ美術館といった有名な美術館のほか、画家の遺族が大切に所蔵し、美術館でも見ることのできないプライベートコレク ションからの作品も多数出展され、約半数が個人蔵です。

また、作品のおよそ3分の2は日本初公開だそうで、出品されている画家陣も豪華そのもの!
モネ、ルノワール、ルソー、マティス、ピカソ……。今回見逃すとなかなか見られない近代絵画の巨匠たちの作品を楽しめる貴重な機会でもあります。

それでは作品の紹介を。
タイトルの通り、会場の作品にはどれも可愛らしい子どもばかり。画家のこどもへの温かい視線が込められている作品が多く、とてもかわいくて見ているとついつい笑みがこぼれてしまうものも。

中でもひと際目立っているのが素朴派、アンリ・ルソーの作品。出品作《人形を抱く子ども》は、鮮やかな赤いワンピースを着た大人びた顔の少女が描かれています。人形を大事そうにしっかりと抱きしめたぽっちゃりした姿。どっしりとした姿は会場でも存在感十分です!
(下の写真左)




クロード=マリー・デュビュッフの作品が何点か出展されています。
家族7人の肖像を、暗い背景から人物が浮かび上がるように格調高く描写した《デュビュッフ一家、1820年》には、画家本人も描かれていますが、なかなかハ ンサム!

デュビュッフ家は代々画家を輩出してきた家系で、こちらはクロードの孫、ギヨーム・デュビュッフの作品です。
左《ガブリエル・デュビュッフの肖像》:中《レイモン・デュビュッフの肖像》:右《カプリ島を背景とした5人の子どもたち》



印象派の巨匠、クロード・モネ(1840~1926年)の「玉房付の帽子を被った ミシェル・モネの肖像」は、なんとも無邪気。モデルは2歳の次男ですが、親としてのモネの暖かいまなざしが感じられます。
モネは、家族の記録用として自分の息子を描き、永く手元においていたのだそう。現代でいう写真の代わりということなのでしょうね。モネは風景を好んで描いたため、人物をアップで描いた作品はあまりありませんが、あくまでも成長の記録として残した貴重な作品です。

左:《ジャン・モネの肖像》中:《玉房付の帽子を被ったミシェル・ モネの肖像》右:《青いセーターを着たミシェル・モネ》






ルノワールの作品は、モデルは息子なのですが、女の子のよう。それも衣装やポーズなどに工夫も凝らして描いており、彼の我が子への思い入れの強さを感じさせます。

左:《遊ぶクロード・ルノワール》中:《道化姿のクロード・ルノワール》右:《ジャン・ル ノワールの肖像》



ポスターにもなっているこの絵のモデルは印象派の女流画家ベルト・モリゾとその夫ウジェーヌ・マネ(画家 エドワール・マネの弟)との間にできた一人っ子のジュリー・マネ。母親のモリゾはその成長を見つめるように、彼女を再三描いていますが、この絵はモリゾと親交のあったルノワールに注文したもの。ルノワールにしてはめずらしく、この肖像のため の習作デッサンが何点かあるそうです。

《ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども》(下の写真左)



当時の画家たちは子どもの絵に、どんな思いを託していたのでしょうか。大人が愛しいと思う子どもへの愛は、どの時代も変わることがないのかもしれません。
最後の第6章は、20世紀のレアリスト達の作品が展示されています。

他にも、第5章のフォービスムとキュビスムの中で、ピカソが描いた自身の子どもたちの絵や、彼らのために作って遊んでいた紙のおもちゃ等も展示されていたり、実際にモデルとなった子どもが当時の事を語る映像があったりと、楽しめる内容になっています。

音声ガイドは、竹内まりやさんが担当。心地よい声で作品をご紹介してくださるので、おすすめです。

なお、「こども展 名画にみるこどもと画家の絆」開催を記念して、六本木ヒルズ内26店舗で、特別メニューが用意されているそうです。展覧会前後のお楽しみにいかがでしょうか?

(掲載した写真は、美術館より特別に許可を得て撮影したものです)


<開催概要>展覧会名:こども展 名画にみるこどもと画家の絆
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
会期:2014419()629()※会期中無休
開館時間:10時~20時 (入館は閉館の30分前まで)
火曜日は17時まで


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2014年5月5日月曜日

「栄西と建仁寺」展


 昨日(5月4日)、東京国立博物館で開催されている「栄西と建仁寺」展に行ってきました。
  この展覧会の一押しはなんといっても2008年の秋以来、約5年ぶりに東京に見参した俵屋宗達の「風神雷神図屏風」。



さらにオススメは迫力満点の海北友松「雲龍図」。
この「雲龍図」、左右の龍を両方とも見ることができるのは明日(5月6日)までです。
紹介が遅くてすみません!
 (5月8日からは右側の龍だけの展示になります)



 実は上2枚の写真、「栄西と建仁寺」展に行く前の予習として先月の29日に京都の建仁寺に行ったときに撮ったもので、現在この方丈に入っている襖絵は高精細デジタル複製です。
 本物の襖絵は、昭和初期の大型台風で方丈が倒壊したとき、他の用件で襖をはずしていたため難を逃れ、その後、掛軸に貼りかえられて、現在では京都国立博物館で保存されています。
 今回の展覧会では、その掛軸が展示されています。

 本物は東京に来ていて、複製が京都の建仁寺にあるというややこしい状況ですが、複製とはいっても、やはり実際にお寺さんの中に入っているといい雰囲気を出しています。
 それに写真まで撮らせてくれる建仁寺さんの優しさに感謝!
 本物もいいですが、複製は身近に文化財を楽しむことができるというメリットがあります。
 ということで、建仁寺方丈の他の部屋の写真も撮らせてもらいました。

 
花鳥図


琴棋書画図



 「花鳥図」と「琴棋書画図」はいずれも桃山時代から江戸初期に活躍した海北友松の作品です。
 「竹林七賢図」が見当たりませんでしたが、これは本物も複製も東博に来ていました。


 下の写真は実際の建仁寺方丈の中央の間、室中です。この空間がそっくりそのまま東博に来て、「四頭茶会」の場面が再現されています。
 (「風神雷神図屏風」は東博では別の場所に展示されています)

 右の達磨さんの絵は、元首相の細川護熙さんの筆になるもので、ちょうどこの時、建仁寺では細川さんが描いた水墨画「四季山水図」全24面も展示されていました。それも素晴らしい作品でしたが、絵を見ていたらなんと細川さんご本人がお見えになり、来場されていた方たちと作品をバックに記念写真を撮ったり、作品の解説をされたりしていました。もちろんこちらは作品もご本人も本物でした。
 
 さて複製の方ですが、京都駅を歩いていたらどこかで見たことのある屏風が。
 
 
              

 そうです、現在ではニューヨークのメトロポリタン美術館にある尾形光琳の「八橋図屏風」です。
 2年前に里帰りしたときに根津美術館で見ましたが、海外に渡って普段見ることができない作品を目の前で見ることができるのも高精密複製画のメリットです。
 複製を手掛けたのは、キャノンと特定非営利活動法人 京都文化協会が共同で行っている綴(つづり)プロジェクト。俵屋宗達の「風神雷神図屏風」や海北友松の建仁寺方丈襖絵の複製も綴プロジェクトが制作したものです。お金は相当かかると思いますが、綴プロジェクトさん、これからもがんばってください。
 

 本物と複製が錯綜して話がさらにややこしくなってしまいましたが、「栄西と建仁寺」展は東京国立博物館で5月18日(日)まで開催されています。
 5月18日までは、東博の本館でも尾形光琳の「風神雷神図屏風」を展示しています。見比べてみるのもおもしろいです。
 この作品は東博所蔵のため撮影可なので、下の写真は本物です。
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尾形光琳「風神雷神図屏風」