2014年3月25日火曜日

横須賀美術館「海辺のミュージアムでみる日本画」

おとといの日曜日(3月23日)、小春日和の日差しに誘われて、横須賀美術館で開催されている「海辺のミュージアムでみる日本画」展に行ってきました。

横須賀美術館に行くのは今回が初めてでした。
駅から遠くて少し不便なところにあるという印象だったのですが、JR横須賀駅から乗った「観音崎」行きのバスは、馬堀海岸駅のバス停を通り過ぎたあたりから東京湾沿いを走りはじめ、日の光に輝く海面や行きかう船、対岸のコンビナートの煙突などを見ながら快適なドライブが楽しめて、30分ほどのバスの旅は思ったほど長くは感じませんでした。

終点「観音崎」の一つ手前のバス停「観音崎京急ホテル・横須賀美術館前」で降りてほどなく歩くと、芝生を張りつめた広い庭の奥にガラス張りの建物が見えてきます。
こちらは建物側から海を見たところ。気分は南国リゾート。

今回の企画展は、横須賀美術館コレクションの近代日本画。
去年の10月に映画「天心」を見て、そのあと横浜美術館で開催された「横山大観展」を見て以来、すっかり近代日本画ファンになってしまった私としては、どうしてもはずせない展覧会でした。
内容は期待どおりで、橋本雅邦、横山大観、今村紫紅、竹内栖鳳といったおなじみの画家たちの作品を見て、まためぐり合えた、とうれしさがこみ上げ、おなじみでない画家の作品を見て、こんな素晴らしい作品を描く人がいるんだ、と驚き、こじんまりとした展覧会でしたが十分に楽しむことができました。


こちらは今回の企画展のパンフレットです。



さて、私のこの日の一押しは、山本丘人の「草上の秋」。
二曲一双の屏風で、秋草が一面に描かれていて、琳派風の作品です。
パンフレットに写真が載っていないのが残念ですが、ぜひ会場で見てください。


同時開催されている所蔵品展も見逃せないです。
私の好きな佐伯祐三の絵もありました。
それに、主な作品の解説カードが置いてあり、だれでも持ち帰りできるがうれしいです。
裏面には作品の解説、画家のプロフィールなどが記載されています。


これも「Valleys(2nd Stage)」(若林奮 作)という作品です。奥は美術館の建物です。

東京方面から行かれる場合は、京浜急行に乗って馬堀海岸駅か浦賀駅からバスで行くのが便利ですが、JR横須賀線に乗って横須賀駅で降りると、駅前のバスターミナルの目の前が海上自衛隊の基地なので、最新鋭の護衛艦に合えるかもしれません。
この日は横須賀を定係港とするイージス艦「きりしま」が停泊していました。


去年の6月、軍港クルーズに参加したときは不在だったので、海自の基地の方を見て、「174」という艦番号が目に入った時は、うれしさのあまり思わず小躍りして、何枚も写真を撮ってしまいました。

4月19日(土)には「護衛艦カレー・ナンバー1グランプリ」が開催されます。横須賀では初の開催で、艦艇の一般公開も行われるようです。
5月には「よこすかカレーフェスティバル」(10、11日)、カレー店を巡って食べ歩く「横須賀カレーバル」(19~23日)も開催されます。

この春は横須賀から目が離せません。
<Y>

2014年3月11日火曜日

瀬戸内・南紀美術紀行(1)大塚国際美術館その1

昨年の12月22日~23日には徳島、香川、12月31日から1月2日にかけて南紀、と短い期間で立て続けに旅行をしたので、正月を過ぎても、年末から年始にかけてずっと旅に出ていたような気がしていました。
1月に入って体調を崩したのも、少し無理な日程だったせいかな、とも思いましたが、それでもやはり、いい旅だったなあ、と今でもしみじみ感じています。
2月にも体調の良くない日が続いていたので、アップするのが3月になってしまいましたが、今回から何回かに分けて、「瀬戸内・南紀美術紀行」を連載していきます。

平成25年12月22日(土)

さて、まずは最初の四国旅行。
この旅行の大きな目的は何と言っても「大塚国際美術館」。
ヴァチカンのシスティナ礼拝堂やパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂をそのまま再現したり、世界の名画の複製も一堂に会しているので、以前から行きたいと思っていたのだが、何しろ交通の便がよくないので、なかなか行く機会がなかった。
それが、今回、JR東海の「50+(フィフティプラス)」で「大塚国際美術館スペシャル」というツアーを出したのですかさず申し込んだ。
このツアーは、「のぞみ」で新大阪まで行って、そこから貸切バスで淡路島、鳴門海峡と渡り、大塚国際美術館まで行き、そこでたっぷり5時間。そこからは同じ貸切バスで高松市内のホテルまで送ってもらい、翌日は全くのフリー.。夕方には自分たちで高松から岡山まで行って「のぞみ」で帰るとツアーで、金刀比羅さんにも行ってみたいと思っていたので、まさにうってつけのツアー。
これでお値段はなんと25,000円というから信じられない。
50歳にならないと加入できない「50+(フィフティプラス)」はいいツアーを出している。
歳を取るのも悪くはない、と実感する。

新大阪からバスは順調に進み、1時間ちょっとで大塚国際美術館に着いた。
ここでは昼食タイムも含め約5時間。
5時間もあれば余裕かなと思ったが、展示してある絵画のボリュームが多すぎて5時間ではとても十分ではなかった。

まずはシスティナ礼拝堂を原寸大に再現した「システィナ・ホール」。


1991年、初めてイタリアを旅行したときヴァチカンにも行ったが、「最後の審判」は修復中で見ることができなかった。
そのときは、「最後の審判」が描かれている壁面はカーテンで覆われていて、その前に小さな複製画がかかっていた。一瞬「実物はこんなに小さいのか?」と思ったが、すぐに修復中であることに気がついた。

こうやって実物大の「最後の審判」を目の前にすると、その大きさに圧倒される。
「そうか、本物はこんなに大きんだ」と思わずうなってしまった。



天井画も丁寧に再現されている。



もう一度ヴァチカンに行きたい、という思いもあるが、日本でこれだけ素晴らしいものが見れたんだから、もう行かなくてもいいか、という気にさせてくれるほどの素晴らしい展示だった。

こちらは1991年にイタリアに行ったときに撮ったヴァチカンのサン・ピエトロ寺院。

<Y>

(次回に続く)







2014年3月3日月曜日

「世紀の日本画」後期・特別観覧会レポート

日本美術院再興100年 特別展 「世紀の日本画」後期・特別観覧会に参加しましたので、今回はそのご報告をしたいと思います。
 


「世紀」とは、 日本美術院が大正3年に再興してから現在までの100年、その「 1世紀」という意味。つまりは再興院展の歴史を遡って100年をたどるというものです 。
長い歴史には、狩野芳崖、横山大観、菱田春草、小林古径、前田青邨、安田靫彦、小倉遊亀、平山郁夫ら近代日本画の巨匠たちが名を連ねています。この展覧会では全集などで目にしたことのある有名な作品と、 最近の作品がバランス良く配置されていました。
   
いくつかお気に入りの作品を紹介しますと、
   
狩野芳崖「悲母観音」。江戸・木挽町狩野家に入門し、狩野派の伝統を学びながら、 明治初期、フェノロサに見いだされ、 日本画革新運動の強力な推進者となった芳崖。
この作品はそれまでの日本画の伝統をふまえつつ、 西洋画の表現を随所にとりいれた近代日本画の幕開けともいえる傑作です。 慈愛に満ちた観音の表情はとても美しく、幼子が近代日本画の誕生のようにも見えました。
   
横山大観「屈原」。すくっと立って前を見る屈原の姿。鬼気迫る顔面の表現。凄まじい迫力です。背景は吹き荒れる風。草木は強く揺れ、2匹の鳥は屈原と同じように上目遣いで睨んでいます。天心を深く尊敬していたという大観。明治31年という天心が、東京美術学校校長を追われた年に描かれたこの作品は、大観は天心を屈原に重ねて描いたともいわれていますが、大観の天心への強い思いを感じる作品でした。
   
橋本雅邦「龍虎図屏風」。    雅邦は、 木挽町狩野家邸内で生まれ、御用絵師としての道を歩み始めますが、 明治時代に入ってからは東京美術学校の教員を務め、岡倉天心らと日本美術院を創立するなど、明治期の日本画の主導的な役割を果たしました。
本作は、明治28(1895)、 第四回内国勧業博覧会の出品作。発表当時、そのあまりの新しさゆえか、評価は優劣こもごもであったそうですが、 昭和30年には、明治の美術 品として初めて重要文化財に指定されています。実際に見てみると、まさに「龍虎対決」! 画面の大きさとともに、対峙する2匹の龍と虎のすさまじい迫力、荒れ狂う波と降り注ぐ雨の中、雷鳴や風の音が聞こえてきそうな見事な作品でした。
   
菱田春草「四季山水」。日本のふるさとの原形を描いた、澄んだ色彩がとても美しい作品。 後期は秋冬の場面で日本の自然や風物が春草らしいやさしい表現で 詩情豊かに描かれています。彼はこの作品を描いた翌年に36歳で亡くなりますが、もっと長く生きていればと悔やまれます。
   
木村武山「小春」。 武山もこのような作品を描くのだなと新鮮な驚きを感じましたが、彼はこの頃花鳥画に傾倒していたようです。琳派の影響、中でも風にしなる木々や草花の様子は、抱一の最高傑作「夏秋草図屏風」をイメージさせました。

今回の白眉とも思えたのが、岩橋英遠の「道産子追憶之巻」。 北海道出身の日本画家・岩橋英遠氏の作品です。絵巻形式で全長29メートルにも及び, 北海道の美しい四季が描かれています。「絵のうえでいろんなことをやったつもりでも、 生まれて20年間を過ごした北海道の体験が基準になってしまう。」 という画家の言葉に、生まれた場所が人へ与える影響の大きさと、ふるさと北海道への深い愛情を感じました。
   
本展覧会の最後の展示は、再興院展50回目の記念に描かれた「日本美術院血脈図」です。騎乗の天心の周囲に横山大観、菱田春草、下村観山ら多くの画家たちがシルエットで描かれています。
急激な西洋化の荒波が押し寄せた明治という時代の中で、日本の伝統美術の優れた価値を認め、 日本美術の保護・再興、さらには国内外への普及に力を尽くした天心。
天心の指し示す日本画の理想に向かって、これからも多くの画家が続いていくのだろう、と思わせてくれる作品でした。   

「世紀の日本画展」は41() まで開催です。近代日本画の巨匠たちの代表作がまとめてみられるこの貴重な機会をお見逃しなく!

最後に、この展覧会を記念して、岡倉天心 生誕150周年 没後100周年記念に制作された映画『天心』」が特別に上映されますのでご案内を。
岡倉天心役の竹中直人はじめ皆さん適役で、北茨城五浦での厳しい生活や、画家たちの新しい日本画への情熱、その人となりがとてもよく描かれた秀作です。
春草が病で五浦を離れる場面などは特に感動的で、映画だけでも充分見ごたえがありますが、映画に登場する画家たちが描いた作品と併せて見ると、より楽しめると思います。この機会にぜひご覧ください。<N>
       
映画『天心』上映
会場  東京都美術館講堂
日時  2/22(土)、3/19(水)、3/21(金・祝)
各日 11:00開演(開場10:30)14:30開演(開場14:00
入場料  一般1300円、シニア(60歳以上)1000
入場券は、東京都美術館講堂前で当日10:00より販売。
「世紀の日本画」展の観覧券(半券可)提示で100円割引になります。